優良中小型50社に学ぶ資本政策(2)

〈営業キャッシュフローを投資の制約にしない〉

営業キャッシュフローや減価償却費は、本来実行すべき投資額とは関係がない。本当は競争力維持に不可欠な投資が、このような暗黙の制約ゆえ見送られ、あるいは削減されるとしたら残念なことだ。過去より過大投資と資本効率の低迷を批判されてきたためか、投資を償却の範囲内とか、キャッシュフローの範囲内とする会社が、依然残っている。

継続してフリーキャッシュフローが赤字では、やがて経営が立ちゆかなくなるのは確かだ。しかし、将来のキャッシュフローの源となるのは、ほかでもない(研究開発や人材を含む)投資活動であるし、その判断軸は、原則として資本コスト等を反映した採算管理であるべきだ。

先の50社では、20年度に7社のフリーキャッシュフローが赤字であった。その背景につき、大型投資の意図や需要環境が丁寧に説明されている事例もあり、高い資本効率を実現してきたトラックレコードは、その信憑性の裏付けにもなっている。

東洋合成(4970)は、業界動向や投資効率などを総合的に勘案した上で、先端電子分野での製品需要の拡大を見据え、中期経営計画(中計)で設けた120億円の戦略投資を当初計画どおり実施した。18年度から20年度はフリーキャッシュフローが赤字に沈んだが、時宜を得た高付加価値品の生産能力増強が奏功し、同社は20%を超えるROEを保ったまま、21年度に中計の利益目標を1年前倒しで達成した。