優良中小型50社に学ぶ資本政策(10)

〈経営資源の配分先に具体性を〉

経営資源をどのように配分し、具体的に何を実行するのか説明することは、ガバナンス・コード上も要請されている。設備や研究開発に関しては、どれだけの原資(営業キャッシュフローや利益)を振り向けるかという金銭的な把握が比較的容易だが、人的資本への投資は、リカレント教育等の研修の充実、評価・報酬体系の改革、役職員の多様性など資金面だけでは効果を把握しきれない面もあり、開示の工夫について今後の進展が待たれるところだ。

先の50社について調べると、中計期間の累計投資額を「(戦略)投資枠」などとして掲げ、その配分予定先まで具体的に説明したのは12社に留まった。金額の多寡が全てではないが、資金の配分先は事業戦略の裏付けとして重要な情報である上、企業価値への影響をどう考えるか、投資家との対話の端緒にもなりうる。営業キャッシュフローや利益の使途に関して、定性的、抽象的な開示に終始する会社の方が多いのは、やや残念なことである。

特殊性の高い鉄道工事の施工力などに強みを持つ東鉄工業(1835)は、21年度から24年度の中計期間において、累計の営業キャッシュフロー260億円と手元現金を、設備投資(240億円)と株主還元に配分することとしている。

同社は設備投資の内訳を「人材⼒」の強化50億円(新研修センター設備関連、事務所移転・改良、働き方改革ツール(RPA等)導入)、「技術⼒」の強化160億円(大型保線機械増備、機能向上更新、安全・品質向上機器導入、技術開発推進、開発品導入)、その他維持更新30億円と詳細に示している。企業体力の源泉たる人材と技術を更に高める、という同社の経営方針に合致した内容である旨、容易に確認できる。         

ユアサ商事(8074)は3年の中計期間ごとに累計当期純利益の配分計画を示しており、経営の軸足の変化が分かりやすい。前中計では投資、株主還元、将来への投資原資の割合が概ね1/3ずつであったが、現中計(22年度まで)では投資の割合を57%(170億円)まで増額し、株主還元率は33%以上を維持するとした。

同社はコア事業の深耕を核にしつつ、海外事業やデジタルトランスフォーメーションに向けた投資を拡大する。投資の内訳は、成長事業及びコア事業に50億円、海外に40億円、ロボ(AI)&IOTに40億円、社員のITリテラシー向上を含むITデジタル投資40億円とされる。