優良中小型50社に学ぶ資本政策(6)

〈必要な現金だから説明する〉

現預金の必要額については、金融環境に加え、キャッシュフローの変動、商習慣、信用力、買収機会、サプライチェーン・リスクを含むBCPなど様々な要素に依存するため、外部からは適正水準の見極めが難しい。単一商品への依存度が高いとか、担保資産が乏しい業態では、売上高や総資産対比でみた現預金が多目になる可能性がある。

金融関係の2社を除く48社についてみると、現金等の水準が月商比で3ヶ月未満は22社、3ヶ月以上6ヶ月未満は22社、6ヶ月以上は4社となった。一般的には、6ヶ月というとかなり厚めの印象がある。 公表資料で現預金水準の適切性につき説明している例は限られるが、投資家からの質問が多い場合は特に、開示対応が望まれる。

程度問題ではあるが、一定の資本効率を維持している会社であれば特に、株主が納得できる説明を用意するのは十分可能と思われる。

自動二輪ヘルメットのSHOEI(7839)は、健全な財務体質により事業継続を長期にコミットし、他人資本等に頼らない財務的な独立を維持する方針で、無借金経営を維持してきた。 また、同社は現金保有(月商比5.8ヶ月)について、「将来の様々な成長投資のみならず、伝染病流行、大規模自然災害等の発生や、予期せぬ市場の冷え込みによる生産能力の落ち込みを受けても、ブランドを棄損することなく終息まで耐え抜くだけの体力を備えるべく、現預金を手厚く維持している」と説明している。

定性的な説明ではあるが、世界的ブランドを育んできた経営哲学と、20%を超えるROEを継続してきた実績があり、対話の出発点として、投資家は前向きに評価すると考えられる。