優良中小型50社に学ぶ資本政策(7)

<ハードルレートを頻繁に変えない>

資本コストの推定に資本資産評価モデル(CAPM)を使う場合、計測されるベータの推定値や無リスク金利等のインプットを毎年見直し、経営指標を更新すべきなのか。金利水準の大きな変化や、事業再編による業容の変更などなければ、そこまでの必要はないものと考えている。

資本コストを基準に投資案件の管理を行う際、昨年に承認されたプロジェクトを、例えば今年はベータ値が上がったので中止する、という発想は現場の混乱を招く。もとより市場データの計測期間の取り方や推定値の精度など技術的な課題もある。

50社の中には、経営成績の分析において、ROICと加重平均資本コストのスプレッドがベータ値の上昇等により悪化したと報告する会社があった。分析自体に問題はないが、これが業績評価に使われるとしたら、悪化が経営の責任範囲なのかどうかは疑問である。

資本コストはある程度の幅をもって捉え、安全率をみてハードルレートやROIC等の経営目標を設定し、これらを一定期間は動かさないのが現実的である。

加賀電子(8154)はグローバル競争に勝ち残る企業を目指し、21年11月に中期経営計画を更新した。自律的成長と新規M&A等で24年度までに売上高を年率17%で伸ばす計画であり、成長戦略を支える健全な財務基盤が不可欠となった。

同社は「借入れ余力」、「キャッシュ創出力」、「資本効率」、「安定性と信用格付け」の各々に数値目標を設け、資本効率については、株主資本コスト(7%~8%)(同社による算定根拠は、無リスク利子率 0.02%(10年国債5年平均利回り)、マーケットリスクプレミアム6.3%(TOPIX利回り)、ベータ1.2(5年週次))を意識しつつ、計画期間中は安定的にこれを上回る 8.5 %以上のROEを維持するとした。