優良中小型50社に学ぶ資本政策(8)

<P/L項目のみを経営指標にしたとき>

経営指標としてROEやROICを用いねばならない決まりはないが、利益額など損益計算書(P/L)項目を目標に掲げる場合は、資本効率面にも問題がないか、外部から確認できる材料が欲しい。売上高や利益が増えても、資本効率の低下は起こりうるためだ。

売上高や営業利益の絶対額、売上高利益率、EPSなど損益計算書項目のみを経営指標とする会社は50社中16社あった。多数派となる31社は、資本効率系の目標(ROE、ROIC、ROA等)とP/L項目を併用している。

これらP/L目標のみの会社は、①すでに資本コストを十分上回るROEやROICを達成してしまっている、②他社に先駆けて、まずは成長市場を取り込む事業拡大を優先している、③事業再構築の過程にあり、モデルの転換や財務体質改善を優先している、④先行投資の時期に当たっており、当面は資本効率が低下する、などの状況に該当しており、ROE等とは別の目標を選んだものと推察される。

東和薬品(4553)は環境変化への迅速な対応を基本とし、経営指標を持たない方針だが、当面は売上高営業利益率10%程度を目指しつつ、売上高の伸びを重視すると表明した。

国によるジェネリック医薬品の使用促進策で需要が拡大し、他社製品の供給停止も重なって、将来にわたり製品を安定供給できる体制の構築が急務となっている。償却負担が重くなり、薬価改定も逆風となるが、持続的成長のために必要な投資として23年度に生産能力を20年度比で52%増とする大型投資を進めている。なお、同社の21年度のROEは12.8%で、4期連続して12%を超えて推移している。

北海道電力(9509)は持続可能な成長を目指し、2030年度の目標指標として連結経常利益と自己資本比率を掲げ、資本の回復と500億円の重点新規投資(再生可能エネルギー、海外電気事業、ガス供給)を計画に盛り込んだ。重点新規分野を含む先行投資が続く中、自己資本の積み上げによる財務基盤強化が優先されている。