優良中小型50社に学ぶ資本政策(9)

<「見直し中」は投資対象にしにくい>

事業環境の変化に対応し、必要があれば機動的に事業戦略を見直すのは当然である。現実性が薄れた計画や経営指標を「見直し中」として何ヶ月も据え置くことは、投資判断が困難な期間を意味し、望ましくない。                                 

計画期間中であっても、仮に目標値の下方修正や達成時期の延期を伴うものであったとしても、修正後の戦略と目標を早期に公表できるのなら、会社の進む方向や対応力が明確になるメリットがあり、資本市場からの好感度が高い。

見直しに時間を要する場合は、その時点での判断や施策を逐次説明してもらうことが有用である。戦略や施策、経営指標のどこが変わるのか、変わらないのか、整理して開示する(22年5月に、計画策定時の前提との乖離及び環境事業や人的資本への投資加速を理由として中計を取り下げた高砂熱学工業がよい参考事例となる)。

サムティ(3244)は、新型コロナウイルス等による経営環境の変化を契機に重点戦略を見直し、前中計期間を9ヶ月残して、新計画の公表に踏み切った。

レジデンス分野では「開発して保有する」事業モデルに転換し、さらに成長戦略の柱として海外事業を新たに戦力に加えた。元の経営指標であるROE(25年度15%)や自己資本比率(同30%)は維持しつつ、賃料収入等の売上構成比をKPIに追加し、投資計画においては海外事業への配分額800億円を新設した。